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Interview

宅配物流、安全装置、水上離発着──社会実装と課題解決を軸とした開発がトレンド~第1回ドローンサミット デモンストレーションレポート~

#NIRO #ドローンサミット #パラシュート #兵庫県 #固定翼型ドローン #宅配 #水上ドローン
2022.12.12

2022年9月1日(木)・2日(金)の二日間に渡り兵庫県ポートアイランドにて「第1回ドローンサミット」が開催された。国内のドローン事業者や国内で行われている各種実証実験等の取組を全国的に発信し、これまでより一層、ドローンの社会実装を加速させたいとの思いに、国内のドローン事業者や関連事業者が全国から集結。1日目約5,800人、2日目約7,100人の合計12,900人の来場者を迎え、活況を呈した。本稿では9月2日にポートアイランドしおさい公園周辺にて実施したドローンのデモンストレーションの様子をレポートする。

 

神戸港を横断するドローンコーヒーデリバリー、氷も溶けないスピーディな運搬

TOMPLA株式会社(新潟市)によるデモでは、神戸ハーバーランドumie MOSAIC店のスターバックスコーヒーから、ドローンサミットを開催しているポートアイランドしおさい公園まで、神戸港を自動制御でドローンが横断。配送したのはスターバックスのアイスコーヒーだ。ポートアイランドには研究所や大学などが多くあるが飲食店は少なく、配送員から避けられがちな立地だという。

陸路であれば自転車で約20分かかる距離を、ドローンであれば約4分での飛行で到着することができる。カップからこぼれること無く届けられたアイスコーヒーは内閣官房小型無人機等対策室 高杉審議官らが受け取り、「氷も溶けていません」と見学者に説明しながら、日差しの強い晴天の下で試飲した。

本デモは、兵庫県と新産業創造研究機構(NIRO)の2022年度「ドローン社会実装促進実証事業」採用事業となっており、10月から11月にかけて出前館アプリを利用した定期配送の実証実験を実施予定だ。

「ドローン配送においては、機体開発、法整備は進んできているところ。この後、ドローン配送サービス事業者が商品を届けるにあたって今一歩足りないところを我々は提供していきたい」とTOMPLA 藤本代表は語り、ドローン物流、ドローン宅配の物流システムやドローンの航路設計事業にてドローン利活用の分野に貢献していきたいと意欲を見せた。

ドローン飛行に「安全装備」を。緊急パラシュートとエアバックで物理的に“守る”

車のエアバックなどセーフティシステムズ事業を手掛ける日本化薬株式会社(千代田区)は、市街地地域におけるドローンの安全確保を促進するためのドローン用の物理的安全装置として、既に商用化されている産業用ドローン向け緊急パラシュートシステム「PARASAFE CA12-01」に加え、サミットで初公開となる産業用ドローン向け緊急エアバッグシステムのデモを行った。

ドローンを高度30m以上の位置から降下させるとドローンが異常を検知し、極少量の火薬を用いてパラシュートを高速射出・展開し、降下速度を減速。これに合わせてエアバッグを展開させることで、ドローンに大きな損害を与えないように着地する。現在は最大離陸総重量25kg向けを対象として開発が進んでいる。

「ドローンの社会実装が進んでいく中で、ドローンの安全に注目が集まっている。飛行中にバッテリーが切れるなど万が一の時に、このような装置を使って安全を担保出来ることで、ドローンの活躍できる場が拡大する。それにより更にドローンの社会実装の場が増えていくと考えている」と日本化薬は事業への思いを語った。

兵庫県とNIROによる2022年度「ドローン社会実装促進実証事業」採用事業となる本件は、市街地地域におけるドローン事業の促進を目的として、これらパラシュートとエアバックを用いた落下試験を実施。ドローン事業者やドローンを利用する予定の事業者、周辺住民や自治体に、その状況を見学してもらい、ヒアリングやアンケートを通して安全装置の評価を行う予定だ。

水上離発着可能な無人飛行艇で、“海”のドローン実装に多様性を

新明和工業株式会社(宝塚市)は、8月に初飛行に成功したばかりの固定翼無人飛行艇「XU-M」のデモフライトを実施した。海難事故の救助活動などで利用される救難飛行艇「US-2」など、水陸両用機である有人飛行艇をつくり続けてきた航空事業部が、これまで培ってきた技術を活かし無人飛行艇の開発を進めている。水上離発着が可能である利点を活かし、海洋観測、観察などに活かしていく狙い。

初披露となる「XU-M」は海洋観測などを、ポートアイランドしおさい公園沖から離水し、見学者や取材陣が見守る中、青空を鳥のように大きく舞い上がった。その後、パイロット判断でミッションモードへ。約五分程度、自動で高度約20mを8の字に大きく旋回した後アプローチを開始し、パイロットのマニュアル操作で着水した。

水上離発着ドローンのメリットについては、社会実装の観点から「我々は離島などでも実証実験を行わせて頂いているが、陸地では離発着する場所を見つけることがなかなか難しい。ただし、どんな小さな島でも港はある。港はアクセスがしやすく、利用もしやすい。天候によってマルチコプターを使うなど組み合わせれば、色々な使い方が考えられると思っている」と、コメントがあった。

新明和工業は、兵庫県とNIROによる2020年度「ドローン社会実装促進実証事業」の採択企業で、固定翼無人航空機による大気汚染観測を、日本気象株式会社、神戸大学と共に行っている。国内では数少ない固定翼の無人航空機開発メーカーとして、創立から100年を超える航空機メーカーとしての知見・経験を活かした機体開発動向には、今後ますます注目が集まりそうだ。

取材・文=かのうよしこ